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高齢者の口腔ケア
角 保徳
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2002 年 56 巻 10 号 p. 594-600

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抄録

近年, 口腔状態と種々の全身疾患との関連性について興味が持たれている. とくに, 誤嚥性肺炎は, 要介護高齢者にとって一般的かつ医療費のかかる疾患である. 誤嚥性肺炎による病死は老年者の健康の主要な問題と認識されている. 一方, 歯科医師や歯科衛生士によって行われる専門的口腔ケアは, 施設入所高齢者の誤嚥性肺炎の危険性を減少させたと報告されている. しかしながら, 専門的口腔ケアは, 在宅や施設入所の要介護高齢者に常に提供できるものではない. 高齢者の口腔自己管理能力は加齢とともに低下し, その分野における看護・介護職員の役割の重要性は高まりつつある. 看護・介護職員は, 有効な口腔ケアを提供する重要な役割を担っている. しかし, 要介護高齢者の口腔ケアをいかに提供するかに関する研究はほとんど見られない. 看護・介護職員による口腔ケアは, 時間的制約, 他人の歯を磨く技術の困難さ, 要介護高齢者の非協力性および必要性の認知の欠如により, 必ずしも適切であるとはいい難い. 加えて, 看護・介護職員による口腔ケアは不十分な視野と不適切な姿勢で行われている. ゆえに, 口腔ケアを十分行えない患者に対する単純かつ有効な口腔ケア手順(口腔ケアシステム)の開発が緊急の課題となっている. システム化された口腔ケア手順はいまだ発表されておらず, 看護・介護職員は適切なガイドラインすら提供されていない. かかる背景のもと, われわれは要介護高齢者向けの口腔ケアシステムおよび口腔ケア支援機器を開発し, その概略を本稿に記載した.

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