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血液透析と腹膜透析
―在宅血液透析や腹膜透析はなぜ浸透しないのか―
吉村 光弘
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2003 年 57 巻 11 号 p. 654-658

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抄録
高齢化社会に対応した在宅医療の流れは, 透析医療に関しても拡大されるべきであろうが, 家庭透析や腹膜透析(CAPD: continuous ambulatory peritoneal dialysis)は一向に浸透しないばかりかむしろ減少に転じている. 就業という点では透析施設で行う血液透析に比べれば生活の自由度は高く, 残腎機能や尿量が減少しにくいので初期に腹膜透析を導入するメリットは大きい. しかし, デメリットも多い. 自己管理を一人で行うストレスは大きく, 透析導入前と同じ仕事量をこなすのは心身両面で難しい. 長期腹膜透析は硬化性腹膜炎を生じる危険性が出てくる. 急増する糖尿病性腎症や腎硬化症の患者は高齢者が多く, 既存の障害のために在宅では自己管理が難しい. 長期入院となると腹膜透析のバッグ交換は看護師の負担が大きく, 長期療養型病院では受け入れてもらえない. 血液透析と腹膜透析との医療費に差がないようになっているのは日本だけであり, 腹膜透析の価格がもっと安くなって患者や家族の支援に還元されれば, 急増する高齢者の透析問題を解決する突破口になるかもしれない.
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© 一般社団法人国立医療学会
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