抄録
本研究においてわれわれは発症早期の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者63名, また非侵襲的人工呼吸器を導入したALS患者10名, さらに気管切開・侵襲的人工呼吸器を装着したALS患者30名を対象に呼吸理学療法を実施し, その有用性について検討した. 発症早期ALS患者に対しては国立精神・神経センター国府台病院で作成した呼吸理学療法を実施し, また非侵襲的人工呼吸器を導入したALS患者に対しては呼吸理学療法として胸部圧迫式換気補助法を併用した. また気管切開・侵襲的呼吸器装着後のALS患者に対しては積極的に離床を促すよう実施した.
その結果, 発症早期の呼吸理学療法が気管切開・侵襲的呼吸器装着までの期間を延長させるために有効な手技となることが示唆された. また非侵襲的人工呼吸器導入症例においては胸部圧迫式換気補助法により酸素化能の改善, 呼吸困難感の減少, 血液ガス分析の改善を認め, これが新しい呼吸理学療法の技術になると考えられた. 気管切開・侵襲的人工呼吸器装着後も適切な呼吸管理により離床が可能であり, このことが肺合併症の予防に有効であるとともにQOLの維持・向上に効果があると考えられた.