抄録
進行性核上性麻痺(PSP)では, 初期からよく転倒することが臨床特徴の一つである. PSP入院患者の転倒の特徴は, 初期のみならずADLが悪化した進行期においてもみられ, いずれのADLにおいてもパーキンソン病に比べ転倒頻度が高く, 昼夜を問わず生じ, 入院1ヵ月以内が多く, 排泄に関係して転倒につながる場合が多いことであった. H14年度とH16年度の調査を比較すると, 入院中の転倒患者率は15%から17.7%とほぼ変化がなかったが, 転倒患者の転倒頻度は2.1回/月から0.43回/月へと減少していた. 一方外来患者では, 1ヵ月間という短い調査期間にもかかわらず転倒患者率は61.9%と高く, 重篤な外傷が生じていた. 外来患者ではPSPであること自体が転倒の危険因子(オッズ比3.66)であるが, PSP患者における転倒の危険因子は, ADL(介助歩行レベル)および筋力低下がないことであった. 今後は在宅患者の転倒防止対策が急務である.