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筋ジストロフィーの歯科学的特徴
佐々木 俊明
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2007 年 61 巻 12 号 p. 786-790

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抄録

筋ジストロフィーの口腔・顎顔面領域の形態と機能における, これまでの知見について紹介する. この領域の研究は, Duchenne型筋ジストロフィー: Duchenne Muscular Dystrophy (DMD)を対象にしたものが数多く, 近年は筋強直性ジストロフィー: Myotonic Dystrophy (MyD)についての報告もなされるようになった. 形態的特徴では, 舌肥大はDMDに認め, 舌萎縮はMyDに認めた. 歯列弓は, DMDで上下顎の歯列弓幅径が増大し, 長径は短縮していた. MyDでは, 上顎歯列弓の幅径が減少し, 高口蓋との関係が示唆された. 不正咬合では, 開咬および反対咬合が高頻度でDMD, MyDに認められた. X線CTによる咀嚼筋の調査から, DMDの咬筋には脂肪組織の浸潤をともなう筋障害が認められ, 筋断面が増大する偽性肥大が示唆された. 内側翼突筋では, 咬筋ほど著しい筋障害, 偽性肥大は示さなかった. MyDでは, 咬筋, 内側翼突筋ともに高度な脂肪組織浸潤をともなう筋障害と筋萎縮が示唆された. また, DMDの顔貌においては, 顔面周囲長が咬筋断面積の影響を受けることが示唆された. 機能的特徴では, DMDでの最大開口力, 最大咬合力の調査から, 顎顔面の成長期での咀嚼筋は, 筋障害の進行による筋力低下よりも成長による筋力の増加が上回ることが示唆され, この時期では真性肥大の可能性も考えられた. 咬合面積は, DMD, MyDの両者で著しく小さく, 開咬, 反対咬合のためであると考えられた. 以上述べた筋ジストロフィーの口腔・顎顔面領域の形態と機能の特徴が、構音障害, 咀嚼・嚥下障害などを理解する上で一助となることが望まれる.

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© 一般社団法人国立医療学会
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