医療
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新ガイドラインからみた東京医療センターの市中肺炎治療
―2005年冬の入院症例から―
数寄 泰介清水 久実米沢 光平倉田 季代子佐藤 征二郎関 裕美細野 なつ絵若木 美佐竹内 健斉藤 康洋尾仲 章男鄭 東孝矢野 尊啓菊野 隆明加藤 良一小山田 吉孝
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2008 年 62 巻 7 号 p. 386-389

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抄録

肺炎は罹患率, 死亡率ともに高い重要な疾患である. 日本呼吸器学会は2005年に「成人市中肺炎診療ガイドライン」を発表した. 本研究では「成人市中肺炎診療ガイドライン」と当院における成人市中肺炎の診療を比較し, 市中肺炎に対する当院の診療の現状と問題点を調査することを目的とした. 2005年12月から2006年2月まで, 当院に肺炎で入院した59名(平均年齢73歳:男性38名, 女性21名)に対し, 重症度(A-DROPシステム), 基礎疾患, 微生物学的検索, 治療内容と効果の4項目について後方視的に検討した. ガイドラインで外来診療が推奨されている軽症8例が入院加療となっており, 一般病床での対応が推奨されている中等症・重症のうち6症例がICU入院であった. 一方, ICU入院が推奨される超重症2症例が一般病床に入院していた. 治療開始時の微生物学的検索では, 喀痰培養・グラム染色が81.4%, 血液培養が83.1%の症例で行われていたのに対し, 尿中抗原検査(肺炎球菌・レジオネラ)はそれぞれ40.7%, 25.4%の症例でしか施行されていなかった. 初期治療の内容とその効果では, 推奨治療が行われた症例で治療効果がおおむね高かった. 一方で, 超重症肺炎ではガイドラインに準拠した治療が成されていなかった. 初期対応(入院適応の判断, 入院病床)の適正化, 尿中抗原検査の活用と超重症肺炎初期治療におけるガイドラインの遵守が当院の課題としてあげられる.

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© 一般社団法人国立医療学会
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