抄録
症例は64歳, 男性. 咳漱を主訴に来院した. 胸部CT所見で病変を追跡したところ2003年より右S3, 右中葉, 舌区に多発性の大・小の結節影, 気管支拡張があり, 静岡富士病院受診時の2007年には右中葉は虚脱肺になっていた. 経過中空洞病変は認められなかった. 喀痰培養で3回, 気管支洗浄液で1回抗酸菌が検出され, DNA-DNA hybridization法(DDH法)でMycobacterium kansasii (M. kansasii)が同定され, 2003年の日本結核病学会基準を満たす肺M. kansasii症と診断した. イソニアジド(INH), リファンピシン(RFP), エタンブトール(EB)の併用による化学療法を行い, 症状と画像の改善が得られた. 本例は肺M. kansasii症の画像所見に関しては非典型的であったが, 細菌学的基準を満たしており興味深い症例であった.