医療
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62 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 岡嶋 泰一郎, 田邊 真紀人, 中川 潤
    2008 年 62 巻 7 号 p. 375-380
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病患者で, 水溶性食物繊維であるグアー分解物(サンファイバー®)を3カ月間服用し, その有用性と安全性を検討した. 対象は14名の2型糖尿病患者(男6名, 女8名)で, 治療として食事療法のみ, または経口糖尿病薬が処方されている症例である. 本製品を1日3回, 食事とともに摂取し, 摂取開始前, 1カ月後, 2カ月後, 3カ月後に体重, 血圧, 空腹時血糖総コレステロール, 中性脂肪その他の血液生化学などの検査を行った. 血糖コントロール状態の変化については, HbAlc値の変動を観察し検討した. また本製品の摂取状況, 腹部症状の有無, 便通の変化について聞き取り調査を行った. 14例中, 試験を完遂したのは8例であった. 完遂しえた症例において体重, 血圧, 血液生化学, 血糖コントロールなどの変化を認めず, 便通の改善効果などがみられた. 以上のことから, グアー分解質は, カロリーを増加することなく十分な食物繊維を摂取でき, 便通に対して良好な結果をもたらし, 血糖コントロールに影響を与えないため経口剤服用中の症例においても使用できることが示された. 安全性については, 悪心の1例を除きグアー分解質によると思われる有害事象は認められなかった. 2型糖尿病患者において, 食事だけでは食物繊維が十分摂取できないような症例では本製品の使用が薦められる.
  • 湯浅 龍彦, 米谷 富美子, 角田 博, 西澤 舜一
    2008 年 62 巻 7 号 p. 381-385
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病にともなう慢性疼痛の実態を知る目的で, 千葉県パーキンソン病友の会会員にアンケート調査を実施した.
    108件の有効回答中, 3カ月以上続く慢性疼痛を有す者は69名(64%)であった. 自覚症状は, 腰痛が最多であり, 肩こり, 関節痛, 手足のしびれ, 手足の痛みなどがそれに続いた. 痛みの性状は, 鈍痛や締め付けなどが90件, びりびりや電撃痛などが46件であった. 痛みの強さでは, きわめて強い痛みを9名(8%)が訴え, 痛みのために不眠になる者が約半数にみられた. 線維性筋痛症の診断基準とされる11カ所以上の圧痛点を有す者は3名(2.7%)であった. 6割の患者では抗パーキンソン薬で痛みが軽快した.
    今後, パーキンソン病の慢性疼痛の要因を明らかにし, それぞれの原因に沿った治療法の確立が望まれる.
  • ―2005年冬の入院症例から―
    数寄 泰介, 清水 久実, 米沢 光平, 倉田 季代子, 佐藤 征二郎, 関 裕美, 細野 なつ絵, 若木 美佐, 竹内 健, 斉藤 康洋, ...
    2008 年 62 巻 7 号 p. 386-389
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肺炎は罹患率, 死亡率ともに高い重要な疾患である. 日本呼吸器学会は2005年に「成人市中肺炎診療ガイドライン」を発表した. 本研究では「成人市中肺炎診療ガイドライン」と当院における成人市中肺炎の診療を比較し, 市中肺炎に対する当院の診療の現状と問題点を調査することを目的とした. 2005年12月から2006年2月まで, 当院に肺炎で入院した59名(平均年齢73歳:男性38名, 女性21名)に対し, 重症度(A-DROPシステム), 基礎疾患, 微生物学的検索, 治療内容と効果の4項目について後方視的に検討した. ガイドラインで外来診療が推奨されている軽症8例が入院加療となっており, 一般病床での対応が推奨されている中等症・重症のうち6症例がICU入院であった. 一方, ICU入院が推奨される超重症2症例が一般病床に入院していた. 治療開始時の微生物学的検索では, 喀痰培養・グラム染色が81.4%, 血液培養が83.1%の症例で行われていたのに対し, 尿中抗原検査(肺炎球菌・レジオネラ)はそれぞれ40.7%, 25.4%の症例でしか施行されていなかった. 初期治療の内容とその効果では, 推奨治療が行われた症例で治療効果がおおむね高かった. 一方で, 超重症肺炎ではガイドラインに準拠した治療が成されていなかった. 初期対応(入院適応の判断, 入院病床)の適正化, 尿中抗原検査の活用と超重症肺炎初期治療におけるガイドラインの遵守が当院の課題としてあげられる.
  • 藤原 清宏
    2008 年 62 巻 7 号 p. 390-393
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性. 咳漱を主訴に来院した. 胸部CT所見で病変を追跡したところ2003年より右S3, 右中葉, 舌区に多発性の大・小の結節影, 気管支拡張があり, 静岡富士病院受診時の2007年には右中葉は虚脱肺になっていた. 経過中空洞病変は認められなかった. 喀痰培養で3回, 気管支洗浄液で1回抗酸菌が検出され, DNA-DNA hybridization法(DDH法)でMycobacterium kansasii (M. kansasii)が同定され, 2003年の日本結核病学会基準を満たす肺M. kansasii症と診断した. イソニアジド(INH), リファンピシン(RFP), エタンブトール(EB)の併用による化学療法を行い, 症状と画像の改善が得られた. 本例は肺M. kansasii症の画像所見に関しては非典型的であったが, 細菌学的基準を満たしており興味深い症例であった.
  • ―調剤・薬セット時間の効率化と経済効果に関する検討―
    山本 吉章, 野口 祥紀, 石田 奈津子, 中神 育代, 舟木 弘, 堀部 千治, 饗場 郁子
    2008 年 62 巻 7 号 p. 394-399
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    背景:簡易懸濁法は錠剤やカプセル剤を粉砕した際におこりうる光や吸湿による薬効低減, 薬品のロスを回避できる有用な手段であるものの, その普及率は低い. 本研究は簡易懸濁法の普及率の向上を目的とし, 具体的なアウトカムの算出を試みた.
    方法:粉砕法と簡易懸濁法による調剤, 配薬セット業務の必要時間を算出した. さらに, この2種類の方法を行った場合の薬剤費と調剤コストの表算出, および投与中止薬剤の再利用率を調査し, 経済効果を比較した.
    結果:定期内服薬2週間分を粉砕法で調剤すると患者1人あたり平均8.6分の時間を必要としたのに対し, 簡易懸濁法の調剤時間は3.7分であった. 配薬セット時間は粉砕法で患者1人あたり6.2分必要としたのに対し, 簡易懸濁法は3.2分と大きく短縮された. 2週間あたりの調剤コストは粉砕法17,053円に対し簡易懸濁法は5,646円であった. また, 簡易懸濁法は中止薬剤の86.4%が再利用可能であったのに対し, 粉砕法は7.5%であった.
    結論:簡易懸濁法は調剤・配薬セット業務の効率化, 医療資源の有効利用, コスト削減に有用であることが明らかになった. ここで得られた簡易懸濁法の有益性を医療スタッフに提示し, 本法を普及していきたいと考える.
  • 久賀 久美子
    2008 年 62 巻 7 号 p. 400-402
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症(以下, MS)は, 多彩な症状と病気の経過が一様ではないことから, 患者と家族は病気の予測や見通しをたてることが難しいまま在宅生活を送っている. 在宅療養というと重い障害が残り, 介護や看護を必要とした状態に着目されることが多いが, MSは就業や就学を続けながら, 症状コントロールや治療を生活の中に組み入れて在宅生活を送る患者も多い. このようにある程度自立できている患者に対して, 看護者の患者理解と支援が不十分なのではないかと考えている. MSとともに生きる患者を支援するためには, 寛解期を含めた闘病の全期間にわたる時間的継続と, 病棟と外来, 他施設と多職種との連携が求められる.
    課題は多々あるが, 患者の希望を支えるために看護者も希望をもってシステムやケアの工夫・開発に取り組んでいきたいと考えている.
  • 角田 和繁
    2008 年 62 巻 7 号 p. 404-406
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    眼底の画像診断技術は近年めざましい進歩をとげており, なかでも網膜微細構造の観察を可能にする光干渉断層計:Optical Coherence Tomography (OCT)は, 網膜疾患の診断, 治療に関する従来の常識を一変させるほど臨床応用価値の高いものであった. 一方で, 網膜の神経機能を客観的に評価する検査法はいまのところ網膜電図(ERG)に限られており, 網膜の神経機能をイメージングすることは眼底画像解析の究極の目標ともいえるものである. 本稿では, 新しい網膜機能検査法である網膜内因性信号計測法: Functional Retinography (FRG)について紹介する.
  • 宇野 隆司
    2008 年 62 巻 7 号 p. 407-408
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
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