国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
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日本における移民女性の予定外の妊娠と避妊や中絶サービスへのアクセス
――アジア 5 カ国出身者に対するオンライン調査から――
田中 雅子
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2022 年 20 巻 p. 83-102

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抄録

本研究は,移民の妊娠や避妊,中絶に関する調査から,日本におけるサービスへのアクセスの障壁を明らかにすることを目的とする。在留外国人統計から,生殖年齢期の女性の割合が高く,家族の呼び寄せが認められない在留資格者が多い,中国,ベトナム,ネパール,インドネシア,ミャンマーを対象とした。これらの国における避妊法とその利用率や費用を検討したところ,日本は選択肢が少なく,費用が高いことが明らかになった。これらの国出身者に対するアンケート調査には,男女計536人が回答した。女性の16.3%が「妊娠したら帰国」等の警告を受けたことがあり,日本でセックスパートナーがいた人の17.6%が予 定 外 の 妊 娠 を 経 験 し て い た。 分 析 に は,Availability,Accessibility, Affordability,Acceptabilityの4Aモデルを援用した。日本での避妊の選択肢の少なさや費用の高さが障壁となり,出身国から避妊薬を持ち込んでいる例が見られた。日本で販売されていない避妊薬や中絶薬を自己服薬した場合,日本の病院を受診しても,適切な処置が受けられない可能性がある。避妊薬の市販薬化,健康保険の適用,中絶薬の認可などによって,サービスへの障壁を減らすことは,移民女性だけでなく,日本で暮らすすべての女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツの実現につながるのではないか。

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© 2022 国際ジェンダー学会
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