日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 2434-5237
Print ISSN : 2434-5229
特集:希少深在性真菌症の診断・治療ガイドラインから学ぶ
ムーコル症の診断と治療
神田 善伸
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2023 年 64 巻 3 号 p. 77-82

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抄録

 侵襲性真菌症は高度な免疫抑制を背景にして発症する.ムーコル症の発症背景としては糖尿病と造血器腫瘍が多い.また,糖尿病患者では鼻脳型が多く,造血器腫瘍患者では肺ムーコル症が多いという特徴がある.ムーコル症の致死率は高く,早期診断,早期治療開始が望まれるが,臨床的にアスペルギルス症と類似しており,特異的な血清検査も存在しないため,確定診断のためには積極的な生検が必要である.高用量(5 mg/kg/day)のアムホテリシンBリポソーム製剤の投与が標準的な治療法である.無効例,不耐容例,奏効後の経口治療への移行例に対してはポサコナゾール,イサブコナゾールなどのムーコル症に活性を有するアゾール系抗真菌薬が候補となる.また,切除可能病変,特に鼻眼脳病変,軟部組織病変,肺単一病変に対しては外科的処置の併用を検討する.背景の免疫不全状態についても可能な限りの改善を図る.

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© 2023 一般社団法人日本医真菌学会
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