日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 2434-5237
Print ISSN : 2434-5229
64 巻, 3 号
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特集:希少深在性真菌症の診断・治療ガイドラインから学ぶ
  • 掛屋 弘
    2023 年 64 巻 3 号 p. 73-76
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー
     日本医真菌学会では,これまでに代表的な深在性真菌症の診断・治療ガイドライン〔侵襲性カンジダ症(2013年),侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン(2021年に改定),アスペルギルス症(2015年),クリプトコックス症(2019年)〕を発刊してきた.今回,澁谷和俊理事長を委員長に,発症頻度はまれであるが臨床的に重要な真菌症であるムーコル症,トリコスポロン症,フサリウム症,スケドスポリウム症,マラセジア症,および輸入真菌症(ヒストプラスマ症,コクシジオイデス症,パラコクシジオイデス症,ブラストミセス症,マルネッフェイ型ペニシリウム症),さらに注目されているCandida auris等を対象として,それらの眼病変や病理像の解説を加えた「希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン」を作成中である.また今回,設定した複数のクリニカルクエスチョンに対して有志によるワーキンググループがシステマティック・レビューを行い,新たなエビデンスの創出にも挑戦している.
  • 神田 善伸
    2023 年 64 巻 3 号 p. 77-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー
     侵襲性真菌症は高度な免疫抑制を背景にして発症する.ムーコル症の発症背景としては糖尿病と造血器腫瘍が多い.また,糖尿病患者では鼻脳型が多く,造血器腫瘍患者では肺ムーコル症が多いという特徴がある.ムーコル症の致死率は高く,早期診断,早期治療開始が望まれるが,臨床的にアスペルギルス症と類似しており,特異的な血清検査も存在しないため,確定診断のためには積極的な生検が必要である.高用量(5 mg/kg/day)のアムホテリシンBリポソーム製剤の投与が標準的な治療法である.無効例,不耐容例,奏効後の経口治療への移行例に対してはポサコナゾール,イサブコナゾールなどのムーコル症に活性を有するアゾール系抗真菌薬が候補となる.また,切除可能病変,特に鼻眼脳病変,軟部組織病変,肺単一病変に対しては外科的処置の併用を検討する.背景の免疫不全状態についても可能な限りの改善を図る.
  • 望月 清文
    2023 年 64 巻 3 号 p. 83-85
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー
     日米欧のガイドラインによりカンジダ血症の早期診断・治療ならびに中心静脈カテーテルの留置に関する管理が行われ,典型的な眼内炎は現在ではまれとなった.また初期眼病変において適切な抗真菌薬の全身投与が行われた場合の視力予後は比較的良好である.一方,真菌血症に続く初期眼病変の発症は実験的に真菌投与後3日目とされ早期に眼病変を把握することが “真菌性眼感染症のマネージメント” において最も重要といえる.さらに眼底検査による眼病変の検出感度は組織学的変化に匹敵し自覚症状に比し検査の感度が高い.よって,眼科受診による眼底検査の実施は真菌血症の管理において欠くことのできない手段である.しかしながら最近,米国眼科学会からカンジダ血症患者に対する眼底検査の必要性に疑問を投げかける報告が発表された.本稿では,この報告を鑑み真菌性眼病変に対する眼科への相談のタイミングを検討したい.
  • 木村 俊一, 柴多 渉, 冲中 敬二, 阿部 雅広, 荒岡 秀樹, 三村 健介, 戸所 大輔, 掛屋 弘
    2023 年 64 巻 3 号 p. 87-95
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー
     ムーコル症,フサリウム症,トリコスポロン症,スケドスポリウム症などの希少深在性真菌症の診断・治療の多くはエビデンスが限られる.今回,希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン作成にあたり,システマティックレビューワーキンググループ(WG)が立ち上げられた.WGでは委員から候補となるクリニカルクエスチョン(CQ)があげられ,そのなかから,ムーコル症について2つ(治療期間,抗真菌薬の併用療法),フサリウム症(単剤,併用療法のどちらが推奨されるか),トリコスポロン属血流感染症(初期治療の第一選択),スケドスポリウム症(初期治療の第一選択)について1つずつ,また,眼感染症から糸状菌による内因性眼内炎の治療の6つのCQに取り組むことが決定された.システマティックレビューを進め,2022年10月の第66回日本医真菌学会総会・学術集会で進捗状況を報告した.本稿では,その後の進捗も含めて,システマティックレビューWGの取り組みについて報告する.
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