抄録
わが国における医真菌学の黎明期から今日に及ぶ病理学との関わりについて概説した.基礎医学や臨床医学のみならず,農学や獣医学などの幅広い研究分野からなる医真菌学の一部は,病理学ときわめて近い連関性を有している.医真菌学が学会として組織的に活動を開始した当初は,病理学に造詣の深い医真菌学者の講演が目立つ.やがて,病理診断学の発達や研修医制度の施行と相まって病理学の専門性が高まり,病理学の専門家として病理医が医真菌学に関与するようになった.この過程でわが国の医真菌学に大きな足跡を残した先達の病理学者数名の業績を紹介した.最後に医真菌学と病理学の協同進化の重要性に触れた.