日本画像学会誌
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論文
N,N'-ビス(2-フェニルエチル)ペリレン-3,4:9,10-ビス(ジカルボキシイミド)の電子スペクトルと光ディスクヘの応用
水口 仁
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1998 年 37 巻 3 号 p. 234-242

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抄録

表題化合物(PDCと略記)は既に上市されている黒色のペリレン顔料である.PDCをガラス基板上に真空蒸着すると鮮やかな赤色(吸収極大:500nm)を示すが,これをアセトンの蒸気に曝露するか,あるいは100℃で数秒加熱すると本来の黒色(吸収極大:473&610nm)となる.赤色相は分子が無秩序に配列した非晶質であり,分子間相互作用が無視し得る為,光学吸収(500nm)は主として孤立分子の吸収に起因する.これに対し,黒色相は分子がほぽ秩序化した結晶相(quasi-ordered system)である.このような中間状態では分子の吸収(473nm)に加えて,遷移モーメント間の相互作用(励起子結合効果)に基づく新たな吸収が610nm近傍に出現する.さらに,分子が完全に規則正しく配列した単結晶では,473nmの吸収は消滅し,励起子結合効果のみの吸収(610nm)となる.上記の事から,分子を秩序正しく配列すれば610nmの吸収が出現し,分子配列を乱せば吸収が消滅する事が判る.この610nmの光学吸収の出現・消滅をAlGaInPレーザー(発振波長:635nm)の光ディスクに応用した.

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© 1998 一般社団法人 日本画像学会
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