抄録
熱刺激電流(TSC)スペクトルスコピーの概要と,TSC を高分子フィルム状試料および粉体試料へ適用した例を紹介した.球晶化したポリプロピレンフィルム試料に,TSC 法と帯電電荷の熱クリーニング法や帯電領域の可視化などの方法を併用することで,電荷トラップを試料高分子の分子集合状態と関係付けられることを示した.また,電荷制御剤(CCA)を添加したトナー用バインダー樹脂の粉体に対してもTSC 法を適用して,CCA のキャリヤとの摩擦帯電に対する役割を調べた.その結果,CCA 自身が固有の電荷トラップをもつことがTSC スペクトルからはっきりわかる例と,CCA 自身は電荷トラップをもつようには見えない場合があることが判明した.