抄録
筆者は東京産(伝研系), 奄美大島産(古仁屋系), 琉球産(竹富系)のアカイエカを飼育して得た成虫について, 在来取り上げられた形質に加え新しく腹部腹面の暗色斑紋に相違のあることに注目しながら各系の形態学的比較を行い, あわせてそれらの間に交雑系についても検討した.この結果集団として区別しうる形質として1.腹部腹板上斑紋は古仁屋, 竹富両系に存在して伝研系になく, 前2系では(-)(±)(+)(〓)と区別し得る程度の差はあるが常に雄の方が雌より斑紋が顕著に認められた.2.雌背板横帯は伝研系でほぼ直線, 古仁屋系では半月形, 竹富系では両方混じつて存在した.3.雄の翅脈柄室比は伝研系はほぼ240より大きく, 他2系は共にそれより小さい値を示す集団として区別しえた.4.雄外部生殖器の計測には100 D/V値を採用した結果伝研系と他系は50を境としてそれぞれ前者ではそれより大きく後者は小さい2つの集団に分れた.5.交雑諸系についてはそれら諸形質は相伴つて発現せず, それぞれ変異幅の広い集団を呈し, 各形質についての計測値の平均は伝研系, 古仁屋系のほぼ中間的な値を示した.本研究を指導された東大伝染病研究, 佐々学教授, 飼育その他の面で協力を得た三浦昭子氏, その他研究室員諸氏に深く感謝する.