抄録
液晶セルにおいて,方位角アンカリング力制御による配向分割技術を,偏光潜像形成に適用した.ツイステッドネマティック(TN)液晶セルにおいて,方位角アンカリング力とねじれ角の関係を,トルクバランス方程式から理論的に導いた.次に,紫外線照射による架橋反応に伴い,高分子膜の方位角アンカリング力が増加することから,液晶セルに対する照射時間を変えることで,ねじれ角を0°から約90°の範囲で制御可能であることを示した.さらに,白黒写真の印画紙への焼付け工程と同様に,マスク(ネガフィルム)を介しての液晶セルへの紫外線露光,熱現像により,ねじれ角の異なる配向分割領域を容易に作製できることも明らかにした.配向分割処理が行われた液晶セルは,自然光のもとでは一様に透明であるが,平行偏光板間に挿入したとき,用いたマスクの反転画像(ポジティブ像)が可視化される.この液晶配向分割技術により,連続的な中間階調と3000dpiを超える高い分解能を有する潜像の形成が可能である.