日本画像学会誌
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原著論文
電子写真におけるマットコート紙グロス発現メカニズム
北野 賀久江前 敏晴磯貝 明
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2006 年 45 巻 6 号 p. 504-513

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抄録
用紙表面形状が印刷物表面形状形成に大きく影響を及ぼすことが予想されるマットコート紙を用いて,定着工程のパラメータが用紙表面形状に倣う印刷物表面形状を形成するためにどのような影響を与えているか,またオフセット印刷では用紙表面形状に倣った印刷物表面形状を得るための主要因であった用紙の吸液力が,電子写真ではどのような影響を及ぼしているかついて検証した.
その結果,定着工程のパラメータとしてローラ間荷重,定着温度,定着速度を変化させて印刷前後の表面形状の変化を検証したところ,すべてのパラメータで与える定着エネルギーを小さくすることが,印刷物表面形状が用紙表面形状に倣う方向であることがわかった.また定着後の印刷物表面形状に比べて未定着像の表面形状の方が,用紙表面に存在した特徴的な起伏に対応する周波数は保持できている.以上のことから,感光体や中間転写体上に形成されたトナー像は,用紙表面に存在する特徴的な起伏にある程度倣って転移するが,圧力と熱を加えることで用紙表面形状とは異なる形状に変化していると言える.
一方溶融したトナーの毛管吸収の影響を調べるため,異なる吸液力の用紙を用いて印刷前後の表面形状変化を比較したところ,それらの差は小さく,本研究で検証した2ロールで挟持する定着装置の構成では,印刷物表面形状形成における用紙の吸液力の影響は小さいことを明らかにした.
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© 2006 一般社団法人 日本画像学会
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