抄録
電気泳動表示方式等に用いられる非水系の液体においても水系理論が拡張適用され,液中微量イオンが粒子周囲に集まり粒子電荷として駆動力を発生させると説明されてきたことに関し,本研究ではその妥当性について検証を試みた.非水系液体中,液中イオン濃度を増減させた液を用いた泳動実験,典型的な粒子材料に関して空気中と液体中での帯電極性・帯電量の対応を調べた結果,非水系液体中の微量イオンの増大が粒子の帯電に寄与せずむしろ粒子の泳動を抑制する場合があること,また空気中で確認された粒子極性・帯電量が液中での粒子極性・帯電量と対応を示す場合があることが確認された.これは,非水系における粒子電荷が,液中微量イオンに由来するとは考えにくい場合があることを示すものであり,水系の電気泳動理論を非水系においてそのまま拡張適用することには無理があり,非水系に特化した新たな泳動理論の体系化が必要であることを示唆する.