インクジェットプリントヘッドから吐出された微小インク滴の飛翔軌道は,用紙の移動によって生じる気流の影響を受け,用紙上で着弾位置ずれを生じさせる.高画質化のためにインク滴を微小化し,高速化のためにプリントヘッドと用紙の相対速度を早くするとこの問題はより大きくなる.
本報では,計算機シミュレーションにより用紙が移動している系でのインク滴飛翔挙動(着弾位置ずれ)を計算するとともに,生じている気流の解析からこの挙動を説明した.特に単独ノズルからインク滴が吐出される単純な場合においては,インク滴の初速,滴量,用紙移動速度が位置ずれ量に及ぼす影響や,異なる大きさのインク滴が形成するドット間の相対的な位置ずれを検討した.またマルチノズルから連続的にインク滴が吐出される場合において,プリントパターンが軌道ずれに及ぼす影響を検討し,この影響がノズル位置によっても異なることを明らかにした.さらに連続的に吐出されるインク滴群が形成する流束と気流との衝突などによって生じる気流変化を解析することにより,軌道ずれのプリントパターンやノズル位置依存を考察した.