抄録
電子写真システムの開発・設計に対するシミュレーションの適用について,富士ゼロックスにおける取り組みを事例として解説する.近年,電子写真プロセスの多くの物理メカニズムが解明され,シミュレーションによる予測技術が確立されつつある.商用の汎用シミュレータの普及とも相まって,その効用についての認知度が高まり,開発,設計に適用して効果をあげる事例が増えている.適用の形態は様々である.技術開発期を中心とする新規課題に対しては,モデルを構築・適用して解決指針を提示する役割を果たし,さらにモデルの信頼性が高まるにつれて,最適設計への適用が可能になっていく.商品開発では特にシステム設計,ロバスト設計などに活用することで高い効果が得られている.また,開発プロセスへのシミュレーションの導入にあたっての課題もあり,適切な環境の構築と,他の諸施策との連携が重要である.