日本画像学会誌
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Imaging Today
デジタル印刷による絵巻物復刻への挑戦―「コピーはどこまで本物に迫れるか!!」文化財保存技術としてのデジタルアーカイブ―世界初デジタル最新技術で原寸大に再現 至宝『日本の絵巻物』完全復刻シリーズ
大坪 尚義
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2012 年 51 巻 6 号 p. 630-633

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抄録

情報管理サービス業のトッパン・フォームズ株式会社は,DOD(デジタルプリント・オンディマンド)印刷技術のアプリケーション開発に取り組んできましたが,この度,デジタル印刷機を使って日本の代表的な絵巻物を復刻する事を事業化しました.
国宝・重要文化財級の絵巻物は,美術館,神社仏閣において貴重な美術品として厳重に保管されており,特別陳列を除けばほとんど公開展示される事はなく,手にとって開き広げ,巻き込んで鑑賞されるべき絵巻物本来の醍醐味を味わう事が出来ませんでした.
従来の複製は,高価な愛蔵品か,縮小版,モノクロ版もしくは冊子本の形でなされていますが,今回,最新のデジタル印刷技術を駆使し,日本の伝統技術である巻子(巻物)経師の融合により原本を忠実に再現し,かつより普及しやすい価格で製造する事が出来ました.
監修を絵巻物研究の第一人者である東京大学名誉教授 秋山光和先生にお願いし,彩色の再現,装丁の指導,解説書執筆者・所蔵元への紹介等,全面的なご協力をいただいています.
特徴は,和紙の風合いを再現するためにバガス紙を使用しました.紙つなぎ無しのロール紙に10mでも20mでも連続印刷出来る事でありますが,所蔵元からお借りするポジフィルムは,1巻12~16枚に分かれているため,まずスキャナーにてポジ同士の色調補正をした後,デジタルデータに変換します.ポジの左右の歪み補正・色補正,各ポジのつなぎは三洋電機との共同開発によるソフトによって印刷データを作成しました.

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© 2012 一般社団法人 日本画像学会
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