抄録
ナノポアとナノ電極から構成されるゲーティングナノポアデバイは,全ヒトゲノムを1日と$1000で解読する第3世代DNAシークエンサーのターゲットデバイスである.このバイオナノデバイスの動作原理は,ナノポアを通過する1本のDNA上の塩基分子を,塩基分子を流れるトンネル電流の違いにより識別することにある.現在,トンネル電流による1塩基分子識別技術をDNAシークエンサーへと発展させるため,2つの技術開発を行っている.1つは,1本鎖のDNAとRNAの塩基配列決定技術であり,3つの塩基分子からなるDNAと7つの塩基分子からなるRNAの塩基配列決定に成功している.一方,1分子の塩基配列決定のスループットと精度を決定する1分子速度制御技術を開発しており,ゲート電圧により,1分子DNAがナノポアを通過する速度を数桁のオーダーで変調する方法を開発している.