日本画像学会誌
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論文
金属調光沢膜物性に及ぼすドーパント種の影響
土井 浩敬久保 美菜子塚田 学星野 勝義
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2020 年 59 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

著者らはこれまで,過塩素酸イオンがドープされた3-メトキシチオフェン重合体の塗布膜が,金色調光沢を示すことを示してきた.本研究では,過塩素酸イオンの代わりにテトラフルオロホウ酸イオンをドーパントに用いたところ,膜の色および光学物性が異なる結果が得られた.具体的には,ドーパントが過塩素酸イオンの場合は,膜が黄色みの強い金色調光沢色を示すのに対して,テトラフルオロホウ酸イオンの場合は,緑色みの反射が加わることで,より白色に近い金色調光沢色となった.また後者の膜の正反射率は,過塩素酸イオンドープ膜に比べて増加した.それぞれの重合体の分子量およびドープ率に大きな差は見られなかった.一方,各膜のX線回折測定の結果から,テトラフルオロホウ酸イオンの場合には,金色調光沢発現の要因の一つであるedge-onラメラ構造の割合が高いことが判明した.これらのことから,色調の違いおよび正反射率の増加が生じたのは,テトラフルオロホウ酸イオンの存在により膜中のedge-onラメラ結晶の存在割合が増加したためであることが示唆された.

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© 2020 一般社団法人 日本画像学会
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