日本画像学会誌
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59 巻, 1 号
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巻頭言
論文
  • 小寺 宏曄
    2020 年 59 巻 1 号 p. 4-17
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    質感は,網膜像から脳が感じる知覚の現象とされ,光学像のどの特徴が大脳視覚野の刺激として有効か,因子の解明が進みつつある.しかし,複雑な要因が絡み,明解な数学モデルでの記述が難しい.このため,質感の強調や視えの再現には,直感的・発見的手法に拠る傾向も見られる.

    本稿では,双方向反射率分布関数BRDF (Bidirectional Reflectance Distribution Function) 等の計測手段を用いずに,新規な手法を導入して

    A:光沢感・透明感・材質感などの質感の強調,B:シーン間の質感の転送,を試みた.

    Aでは,空気透明感の回復にDehazing,材質感の強調にWeber Contrastを導入し,両者の協調効果を目論んだ.

    Bでは,大脳視覚野像の特徴をシーン間の質感転送に利用した.人は大脳視覚野で対象を知覚する.視覚野像は,中心窩に情報が集中し,周辺ほど粗になる可変解像度特性をもつ.この視野中心への情報の集中特性を利用して,視覚野像の色分布の主成分を目標に一致させる変換により,シーン間での質感の転送が可能となる.質感の目標となるシーンを例示するだけで,好ましい質感をもつシーンに自動変換される.

  • 末永 悠, 永瀬 隆, 小林 隆史, 内藤 裕義
    2020 年 59 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    poly (3-hexylthiophene-2, 5-diyl) (P3HT) を用いた有機電界効果トランジスタ (OFET) において,大気暴露前後で伝達特性の測定,及びインピーダンス分光測定を行った.大気暴露することで伝達特性には変化がないものの,インピーダンス分光測定から得られた10Hz以下の複素モジュラススペクトルには大気暴露によって新しい構造があらわれることを見出した.この構造は,大気暴露によって生じた界面準位に起因すると考えられるため,界面準位を考慮したOFETの等価回路を提案し,等価回路から複素モジュラスを導出した.導出した複素モジュラスを実験結果と比較すると,実験結果を良く再現できることが分かり,OFETのインピーダンス分光測定から移動度,絶縁層抵抗率,接触抵抗のみならず界面準位に関する情報も得られることを示せた.

速報
  • 保坂 一貴, 今野 和彦
    2020 年 59 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    Rayleighは剛体バッフルを有する剛体円板の振動がピストン振動するという仮定のもとに円板表面が一様な速度に振動するというピストン音源の理論を示している.超音波の送受波に用いられているセラミック等の圧電振動子は弾性体であるため,圧電振動子を厚み方向に駆動した際にはその弾性的結合により横方向にも振動する.これは圧電振動子に取り付けられた電極の端部から発生する振動が振動子表面を伝搬し,振動子の音響表面に分布するためで,厚み方向に一様に振動しない.本報告は振動子の音響放射面を一様に振動させるために新たに振動子の側面に音響負荷を付与する“サイディング”を行った.サイディングの効果を検証するためにレーザドップラ振動計を用いて振動子の音響放射面の振動速度分布を測定した.この結果サイディングによって音響放射面の速度分布は平坦であること明らかにした.また,同条件で水中に駆動させて,放射した超音波のシュリーレン画像を得た.その結果波面は一様で,不要輻射がほぼ生じないことを明らかにした.

日本画像学会「Imaging Conference JAPAN 2019」特集
論文
  • 土井 浩敬, 久保 美菜子, 塚田 学, 星野 勝義
    2020 年 59 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    著者らはこれまで,過塩素酸イオンがドープされた3-メトキシチオフェン重合体の塗布膜が,金色調光沢を示すことを示してきた.本研究では,過塩素酸イオンの代わりにテトラフルオロホウ酸イオンをドーパントに用いたところ,膜の色および光学物性が異なる結果が得られた.具体的には,ドーパントが過塩素酸イオンの場合は,膜が黄色みの強い金色調光沢色を示すのに対して,テトラフルオロホウ酸イオンの場合は,緑色みの反射が加わることで,より白色に近い金色調光沢色となった.また後者の膜の正反射率は,過塩素酸イオンドープ膜に比べて増加した.それぞれの重合体の分子量およびドープ率に大きな差は見られなかった.一方,各膜のX線回折測定の結果から,テトラフルオロホウ酸イオンの場合には,金色調光沢発現の要因の一つであるedge-onラメラ構造の割合が高いことが判明した.これらのことから,色調の違いおよび正反射率の増加が生じたのは,テトラフルオロホウ酸イオンの存在により膜中のedge-onラメラ結晶の存在割合が増加したためであることが示唆された.

  • 込戸 健司
    2020 年 59 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    電子写真のクリーニングプロセスにおいて感光体上にトナーや外添剤が付着・すり抜けし異常画像が発生する課題がある.特に近年の高速性,高画質,高耐久の要求品質に対し,感光体に高い帯電電圧を印加することによる表層劣化や,経時劣化による,感光体上付着力の増加に伴い,その課題レベルは非常に高い状況にある.上記に鑑みて感光体上に潤滑剤を塗布する技術が知られている.これまで,感光体上の潤滑剤の塗布状態の定量的な指標に対する分析方法が不十分であり,設計開発時に課題との対応を確認することが難しい場面があった.本論文では複数の分析装置を用いて潤滑剤塗布状態の定量分析方法を確立し,実際の設計開発課題に適用した事例について述べる.

  • 大塚 幸治, 井本 雅規, 山本 晃介, 渡口 要, 大西 拓馬
    2020 年 59 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    電子写真における帯電ローラを用いたDC (Direct Current) 帯電プロセスでは,帯電ローラと感光体ドラムの組み合わせにより,プロセス進行方向下流側で放電が発生することがある.下流放電は画質に重要な影響を及ぼすが,上流放電と比較して放電領域が狭く微弱なため計測が困難であった.我々はプロセス進行方向には微小幅で軸方向に長い微小パターン電極を感光体最下層に作製した感光体ドラムにより帯電プロセス中の電流を測定し,測定された電流を放電電流成分と放電電流以外の仮想変位電流成分とに分離することで下流放電を検出することに成功した.

    さらに数値計算により,プロセス中の移動電荷量を算出し,実験により得られた仮想変位電流と定性的に一致することを確認した.

  • 中尾 修一, 吉岡 広起, 内藤 洋介
    2020 年 59 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    キヤノンでは,小型化・ファーストプリント時間短縮・消費電力削減の面で大きな利点があるODF (On Demand Fuser) を開発し,多くの機種に採用している.このODF定着器において,定着フィルムの表層摩耗は製品寿命を決める重要な因子となっている.定着フィルムの表層摩耗は,荷重と滑り距離の積に比例する一般的な摩耗評価式では評価することができないため,評価工数が大きな通紙耐久評価により評価を実施しているのが現状である.また,定着器のニップ内では接触域内に滑り域と固着域が混在するマイクロスリップ現象が生じていると考えられる.

    本検討では,定着フィルムの表層摩耗をマイクロスリップの滑り域に生じる摩耗であるとらえ,摩耗発生メカニズムを明らかにすると共に,FEM (Finite Element Method) を用いた摩耗予測技術について述べる.

  • 安井 甲次, 加藤 恭平, 石黒 敬太, 依田 寧雄, 金森 昭人
    2020 年 59 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    定着後画像の画質に関する課題の一つに「濃度ムラ (濃度一様性) 」がある.濃度ムラはベタ部を定着させた画像内に濃く見える箇所 (濃部) と淡く見える箇所 (淡部) がランダムに分布する現象である.これまで濃度ムラの物理モデルが曖昧であったり,定量的に評価する方法が確立していなかったため,濃度ムラ良し悪しに対する論理的な説明が出来なかった.そこで今回,濃度ムラのメカニズムを明らかにし物理モデルと定量評価方法を構築する取り組みを行った.その結果,物理モデルを「濃部と淡部のトナー層表面形状に起因する拡散光の比」とし,定量評価値を「拡散光比 (濃部と淡部の拡散光量の比) 」とすることで画像評価 (目視評価) との相関が確認できた.本論文では定量評価方法の概要と,複数の画像サンプルとの相関検証結果,及び定着フィルムへの弾性層付与による濃度ムラ改善効果に関する考察結果を報告する.

解説
  • 村上 毅, 佐藤 修二, 飯塚 章洋
    2020 年 59 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    近年,デジタルコミュニケーションが加速する中,印刷市場においてオフセット印刷からデジタル印刷機への移行が加速され,Print On Demand機が定着している.

    富士ゼロックスでは高い隠蔽率と低温定着性能,多重転写性能を両立した低温定着ホワイトトナーを開発し,プロダクションカラープリンティング市場向け商品「IridesseTM Production Press (イリデッセプロダクションプレス)」に採用した.

    従来の混練粉砕トナー製法でホワイトトナーを作製すると,トナー表面へ白色顔料が露出してしまい,電荷漏えいによる帯電不良や転写不良が発生し,画質欠陥が発生した.特に下敷層としての機能を果たす為には高い転写性能が要求されることから,混練粉砕ホワイトトナーの6色プリントシステムへの適用は困難であった.

    そこで,富士ゼロックスではEAトナー製法を応用し,高屈折率の白色顔料とトナー構成粒子の凝集バランスを精密に制御することで,白色顔料をトナー内部に均一に分散させた.また,トナー中の白色顔料含有量を高める為,トナー表面のシェル構造を精密に制御し,緻密な薄膜構造のシェル層を形成することで白色顔料の表面露出を抑制しつつトナー中の白色顔料含有量を高めた.さらに,Super EA-Ecoトナーに導入したシャープメルトポリエステル樹脂と微分散技術を応用展開し,ホワイトトナー用に詳細設計することでSuper EA-Ecoトナー同等の低温定着性を実現した.

    本稿では新開発のホワイトトナーについて詳細に解説する.

論文
  • 西村 秀明, 小篠 団, 羽橋 尚史
    2020 年 59 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    従来の水性インクジェットプリンタで用紙に印刷をおこなうと,用紙に波打ち状のシワ (コックリング) が発生し,印刷品質が低下するという問題があった.これは用紙がインクを吸収することによって画像部と非画像部が不均一に伸長するためである.コックリングは高濃度の画像を出力する場合や薄紙を用いた場合に特に発生し,従来の技術でこれを防止することは困難だった.今回,我々はこの問題を解決することを目的として,用紙を複数の加熱ローラへ繰り返しニップし,かつ乾燥距離を延長する独自の乾燥技術を開発した.本技術を搭載した高速連続用紙インクジェットプリンティングシステム「RICOH Pro VC70000」は,高濃度の画像を出力する場合や薄紙を用いた場合でもコックリングの発生を抑制し,さらに省スペース・省エネで印刷速度と画質の向上を可能にした.

  • 小林 広紀, 小島 智之
    2020 年 59 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    リコーは2018年,産業印刷向け大判UVフラットベッドIJプリンタ「RICOH Pro T7210」を発売した.RICOH Pro T7210は12個のIJヘッドを6列の千鳥状に配置することで最大100m2/hの高い生産性を実現している.RICOH Pro T7210は,“T7210”,“GP120”,“DG130”の3種のインクセットからインクを選択できる.中でも“DG130”は高機能インクの位置づけであり,「高生産」,「高密着」,「高発色」という特徴がある.DG130はフラットベッドIJプリンタで需要があるアクリル基材をはじめとした難密着基材に対し,プライマーレスで高い密着性と,サイン&グラフィクス分野にも適用可能な高い発色性を併せ持つ.

    本論文では,難密着基材に対するプライマーレスでの密着性向上と,高発色性の実現に関し,高い品質を実現するためのインクの機能に着目し検証を行った結果について報告する.

  • 門永 雅史
    2020 年 59 巻 1 号 p. 83-95
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    水分蒸発による増粘を考慮した自由表面解析モデルを考案し,インクジェット液滴の着弾現象をシミュレーションで解析したので報告する.3次元数値流体力学ツールであるOpenFOAMの自由表面ソルバーを改良し,蒸発・増粘,動的接触角,動的表面張力のモデルを追加して着弾シミュレータを開発した.接触角,表面張力,接触角の時間変化を考慮して,通常の自由表面形状計算を行う.次に,インク中の水分濃度,大気中の水蒸気濃度を移流拡散方程式で計算し,さらに蒸発による体積変化を補正する.水分濃度とVOF (Volume of Fluid) 値 (流体存在割合) から,各メッシュにおける粘度を計算し,ナビエストークス方程式から速度・圧力を計算する.蒸発が終了するまで一連の計算を繰り返すことで着弾現象が解析可能となった.液滴体積,メディア,温度を変えた条件で計算を行い,実験結果を再現可能であることを確認した.しかしながら本計算モデルには多くの仮定やあわせこみが必要あり,インクジェット着弾解析を行うにあたっての今後の課題が明らかになった.

  • 福岡 誠之, 門永 雅史
    2020 年 59 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    動的接触角と接触線速度の関係を考慮したインク滴の濡れ広がりのシミュレーションを行った.インクジェットプリンティングにおける画像品質は,メディア上でのインク滴の挙動の影響を受けるため,その挙動を予測することが求められている.近年では,滴の挙動について多くの研究がなされている.その中で,動的接触角と接触線速度の関係を用いた滴挙動のシミュレーションが広く検討されている.しかしながら,多くの検討は,インクジェットプリンティングで用いられる系とは異なり,mmサイズの大きな液滴で,その滴組成も水などの単純なもので,メディアも印刷用途のものではない.そこで本研究では,インクジェットプリンティングで実際に用いられるインク,メディア,滴サイズを対象にしてインク滴挙動のシミュレーションを行い,実測との比較を行った.そして,動的接触角と接触線速度の関係を考慮したインク滴の挙動シミュレーションは,実測を精度よく再現する結果が得られた.

  • 角谷 繁明
    2020 年 59 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    先の報告では,シリアル走査方式インクジェットプリンタの往復走査間の位置ずれに起因する粒状性劣化と,往または復走査の一方で形成されるドットパターンを取り出した時の粒状性の間に,極めて強い相関関係があることを発見し,後者を改善したハーフトーン手法を開発することで,位置ずれ発生時の粒状性劣化を大幅に低減して,ロバスト性を向上させたハーフトーンが実現できることを示した.本報告はその続報として,位置ずれ発生時の粒状性劣化メカニズムについて,周波数特性などのより詳細な解析を行い,往または復走査の一方で形成されるドットパターンが持つ中低周波成分が,位置ずれによって顕在化することが粒状性劣化の原因であることを,実例を示しつつ明らかにした.

  • 吉田 将太, 松浦 陽, 塩飽 黎, 竹田 泰典, 関根 智仁, 浜口 仁, 熊木 大介, 時任 静士
    2020 年 59 巻 1 号 p. 111-117
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    近年,印刷プロセスを用いた電子デバイスの開発が非常に注目を集めている.中でもインクジェット印刷は,デジタルオンデマンド印刷,高い材料の使用効率,スケーラブルな作製法,非接触印刷という特徴を有しており,デバイス作製を行う上で最も有用な方法の1つである.一方で,インクジェット印刷では,着弾液滴の濡れ広がりの問題から10μm以下の微細パターンを形成することが難しいという課題がある.本報告では,この課題を解決するため,基板表面の濡れ性を制御する親撥パターニング法とインクジェット印刷を組み合わせた微細配線形について報告する.この手法を用いることで,10μm以下の微細配線形成とばらつき低減を実現した.この手法を用いて作製した短チャネル有機薄膜トランジスタ (Thin Film Transistor, TFT) において,電界効果移動度0.23cm2/Vsの良好な特性が得られた.

  • 竹田 泰典, 時任 静士
    2020 年 59 巻 1 号 p. 118-125
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    有機薄膜トランジスタ (OTFT) を集積した有機集積回路は,薄く,柔軟性があり,軽量であるといった,シリコン (Si) ベースの薄膜トランジスタ (TFT) では実現困難な特徴をもつ.また,有機集積回路は,銀ナノ粒子インクや有機半導体インク,絶縁体材料インクを用いた印刷法により作製が可能であり,その特性はマスク蒸着やフォトリソグラフィといった従来の作製プロセスを用いて作製された回路の性能に到達しようとしている.一般的にp型半導体の方がn型半導体に比べて移動度や大気安定性などの性能が高いので,p型半導体のみを用いた集積回路が良く研究されてきた.しかし,最近ではn型半導体の性能も向上しているため,高い性能が得やすいp型,n型半導体の両方を用いた相補型と呼ばれる集積回路の研究報告に注目が集まっている.そこで本研究では,電極形成や半導体形成プロセスに印刷法を用いた相補型集積回路の作製プロセスの開発を行った.この時,電極表面修飾不要なp型半導体を用いることで同一基板上にp型とn型OTFTの作製を実現した.

Imaging Today
  • 増田 道晴
    2020 年 59 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    プリンター・複合機の画像機器業界においても,省エネは重要な課題であり,省エネ基準も年々厳しくなっている.現在,各国で様々な省エネ基準が存在するが,消費電力基準としては,総合的な消費電力の基準要求が主流となってきている.そして,総合的な消費電力基準のグローバルスタンダードとなっているのが,米国のENERGY STAR®である.ENERGY STAR®の取得は,各国の公共調達要件にもなっており,各メーカはこの基準をクリアする為に,技術革新を続けてきた.昨年,この業界の省エネを推進してきたENERGY STAR®の基準が改定されたので,本稿ではこの基準の改定を中心に各省エネ基準動向の説明を行う.

  • 横山 秀治, 田中 雅也, 古山 昇, 菊地 和彦
    2020 年 59 巻 1 号 p. 132-141
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    近年,ENERGY STAR®やBlue Angel Markの改訂に伴い,プリンタや複写機などの電子複写装置の省エネ技術も進化を果たしている.しかしながら,65~80cpmのオフィス対応のカラー高速機領域においては複写もしくは印刷速度に対するパフォーマンス維持とのトレードオフにより,低・中速機で培ってきた省エネ技術をそのまま転用できない状況であり,低・中速機と比較するとTEC (Typical Electricity Consumption) 値改善に対する技術革新が進んでいない.その中で東芝テックのオフィスユースの高速機であるe-STUDIO7516ACシリーズは,中速機に採用されたIH (Induction Heating) 定着器を元に,高速機専用仕様のIH定着器を開発し,カラー高速レンジでの業界トップレベルのTEC値を達成した (2019年10月現在).本稿では,近年の定着技術開発動向と東芝テックのe-STUDIO7516ACシリーズに導入したIH定着技術について解説する.

  • 和田 統, 椿 頼尚
    2020 年 59 巻 1 号 p. 142-148
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    近年,世界的なエネルギー問題や環境問題を背景に,様々な分野において環境への配慮が求められている.複合機の分野においても,省エネルギー性能向上に対する要望は,ますます高まっている.複合機の省エネに対し,トナーの低温定着化は重要視される.ケミカル法トナーは,粒子径,形状,構造の制御や離型剤等の内添剤添加量に自由度が高く,低温定着性能という観点において優れている.しかしながら,多大な設備投資や,界面活性剤除去のため大量の水処理が必要といった課題を有する.粉砕法トナーは,設備投資の抑制,高粘度状態での溶融混錬よる内添材料の微分散化といったメリットを有するものの,構造制御や低融点材料の使いこなしに課題があり,低温定着性と耐熱保存性を高いレベルで両立させることは困難であった.しかしながら最近,これら粉砕トナーの課題を克服することで,ケミカル法トナーにも匹敵する低温定着トナーが各社より上市されている.本解説では,当社での粉砕トナー技術における省エネの取り組みについて報告する.

  • 松本 晃, 清野 英子, 飯塚 章洋
    2020 年 59 巻 1 号 p. 149-154
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    近年の急速な工業化による地球温暖化問題や経済成長などを背景としたエネルギー消費の急増により,限りある資源を有効に活用していくことが今後の大きな課題となっている.

    富士ゼロックスでは,省エネ性能に優れたEA-Eco (EA : Emulsion Aggregate) トナーを開発し,富士ゼロックス機器の省エネルギー化に貢献してきたが,今回,EA-Ecoトナーの低温定着性をさらに進化させたSuper EA-Ecoトナーを開発し,富士ゼロックスのプリンター,複合機,プロダクションプリンターに採用した.

    Super EA-Ecoトナーは,新開発のシャープメルトポリエステルを用い,富士ゼロックス独自の乳化凝集法により前記シャープメルトポリエステルをトナー中に最適配置することで,理想の粘弾性特性を獲得し,EA-Ecoトナーを超える低温定着性を達成している.また,Super EA-Ecoトナーは優れた低温定着性能に加え,粒径が業界最小であるという特徴も有することから,省エネルギーのみでなく,高画質,高生産性,高付加価値化にも貢献している.通常,低温定着設計や小粒径化設計とすることで流動性が悪化するが,Super EA-Ecoトナーではトナーの粘弾性設計に加えて,トナーの周囲に存在する機能性微粒子の種類,大きさのバランスを見直すことで,低温定着化や小粒径化に伴う流動性悪化の課題を解決している.

    本稿では新開発のSuper EA-Ecoトナーについて詳細に解説する.

  • 芦田 賢一, 鳴瀬 邦彦, 小澤 開拓, 中島 智章, 小鶴 浩之, 山本 直樹
    2020 年 59 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    コニカミノルタは,2019年,フルモデルチェンジした新世代複合機・プリンター「bizhub iシリーズ」を発売した.本稿では,新シリーズに搭載した環境負荷低減技術を紹介する.スリープ時電力は,LPDDR4 (Low Power Double Data Rate 4) を始めとする低消費電力デバイスの採用,低負荷時でも電力効率が高いDC-DCコンバータの採用や,通電ブロックのプロセス微細化等,様々な手法により消費電力の削減を実現した.スリープモードからの復帰時間は,復帰制御シーケンス見直しにより,前任機「」bizhub C368シリーズ」との比較で,約4.8秒から約1.2秒と大幅に短縮させ,操作性と省エネを両立させた.トナーは,新規樹脂の導入と薄膜シェル構造により,従来トナーに対して10°Cの低温定着化と耐熱性の両立を実現した.定着器は,パッド加圧方式の採用,ベルトやローラーの小径化や断熱化を行い,定着器として-38%の低熱容量化を実現した.これらの削減により2019年10月に発行される国際エネルギースタープログラムVer3.0もクリア可能とした.

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