2022 年 61 巻 5 号 p. 466-478
ヒンダードアミンは,エレクトレットフィルターの添加剤として知られているが,その作用機構については十分に解明されていない.本研究では,エレクトレットフィルターのモデルとして,正帯電性のヒンダードアミンを負帯電性のポリエステルにドープしたブレンドフィルムを作成し,その摩擦帯電挙動の検討を行った.具体的には,ヒンダードアミンのドープ率と帯電実験における周囲雰囲気湿度が帯電挙動に及ぼす影響について検討した.その結果,ヒンダードアミンのドープ率が10~20wt%のときに正負の帯電量がほぼ同等でかつその差が最大となり,内部電界が最も大きくなることがわかった.また,ヒンダードアミンのドーピングは,フィルムが周囲雰囲気中の水分から受ける影響を著しく低減させることもわかった.すなわち,ヒンダードアミン添加には,内部電界を増加させる効果と,水分の影響を低減させることによって帯電電荷を安定させる効果があり,これらの効果がエアロゾル粒子捕捉能を高めることが機構論的に示唆された.