2024 年 63 巻 4 号 p. 380-387
新型コロナウイルスの流行をきっかけに,患者の傍らまたは患者自身が行う簡易分析検査の必要性が,世間一般に広く浸透した.その手段の1つとして,紙基板上にマイクロ流路を作製したマイクロ流体紙基板デバイス (microfluidic paper-based analytical devices, μPADs) が,注目を集めている.μPADsは低コスト化と分析操作の単純化を両立できるため,その応用可能性の高さから,2007年の最初の報告から今日まで,多くの研究がなされてきた.紙を基板とするμPADsは,その作製に印刷技術を組み合わせることで,大量生産を見据えた再現性の高いデバイスを実現できる.その1つであるインクジェットプリント技術は,文字といった微細なパターン状に指示薬を印刷することができるというユニークな特徴を持つ.本稿では,比色法等を用いたμPADsにおける課題の1つである「定量の難しさ」を,インクジェットプリント技術を活用することで克服を図った,直感的な半定量を可能とするμPADに焦点を当て,紹介する.