2024 年 63 巻 4 号 p. 373-379
本稿ではインクジェット技術を使ったマイクロ流路デバイスへの試薬固定化技術と1ステップバイオアッセイへの応用例を紹介する.インクジェット技術は精確に一定体積の試薬溶液を吐出できる技術であるため,いわゆるプリンターなどの印刷のみならず,近年発展著しい紙基板を使った使い捨て分析デバイスの開発などでも汎用されるようになってきた.本稿ではシリコンゴムのPDMS (poly (dimethylsiloxane) :ポリジメチルシロキサン) 製マイクロ流路デバイスに,お互いに反応してしまう2種の試薬を流路内の異なる位置に独立して固定化し,分析対象を含む試料溶液を導入するだけの1ステップ操作で分析対象成分濃度に応じた蛍光信号を得ることのできる1ステップバイオアッセイデバイスを作製する技術を紹介する.また,その技術を応用した診断マーカータンパク分析,酵素阻害剤分析等の分析性能や,将来展望についても述べる.