抄録
計算化学による正電荷制御剤開発の可能性を検討した.グアニジン誘導体を例にとり検討した結果,分子軌道法により得られたグアニジン誘導体のイオン化ポテンシャルとそれらを含有したモデルトナーの摩擦帯電量は直線関係にあることがわかった.また,グアニジン誘導体の正摩擦帯電量は,SP2の窒素上の電荷密度に影響されていることが指摘された.さらに,ポリマーマトリックス中に有機化合物を分散させると,孤立有機分子の最高被占軌道と最低空軌道の中間レベル付近までシフトした分散有機分子の最高被占軌道が摩擦帯電準位を提供すると考えると一連のモデルトナーの摩擦帯電能が説明される.
これらの結果は,分子軌道法が電荷制御剤開発のための分子設計ならびに摩擦帯電量の予測に有用な手段となりうることを示している.