2020 年 62 巻 10 号 p. 2269-2273
72歳男性.心窩部痛の原因精査目的に経口上部消化管内視鏡検査を施行した.検査終了直後より嗄声が出現し,検査後4日経っても症状の改善を認めなかったため当院耳鼻咽喉科外来を受診した.発声時に高度な嗄声を認め,喉頭内視鏡検査では左披裂軟骨声帯突起の内側前方への偏位,左声帯長の短縮,声帯の弛緩を認めた.また,発声時には声門間隙を認め,最長発声持続時間は3秒と著明に低下していた.頸部CTでは異常所見を認めず,経口上部消化管内視鏡検査時に発生した左披裂軟骨前方脱臼と診断し,全身麻酔下での非観血的整復術により嗄声は改善した.本偶発症は熟練した内視鏡医でも起こしうる偶発症であり,発症した際は速やかな対応が望ましいと考えられた.