抄録
速読習熟に至る過程での生理的な変化を脳波、呼吸、脈波、SpO2の計測により検討した。被験者は右利き青年健常者の男性2名である。課題は閉眼での安静、クラシック音楽静聴、暗算、そして速読教本を用いての記号追跡、文字追跡、文章理解等で、訓練初日から3回にわたり計測した。閉眼課題における後頭部のα波平均振幅値は回を追って大きくなる傾向がみられた。後頭部に対する前頭部のα波位相のLag timeは徐々に小さくなり、集中度の上昇がうかがえた。さらに、左側頭ウェルニッケ言語野近傍の電極位置T5と右後頭02におけるβ波平均振幅値について、文章理解課題実施中の値から記号追跡時の値を差し引いた値を検討したところ、T5においては回を追って減少し、02において増大する傾向が見られた。熟達するに従い、言語理解的な読書から視覚イメージ的な読み取り方になることが示唆された。