国際生命情報科学会誌
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第29回生命情報科学シンポジウム
環境科学は近代科学ではなく未来の科学である
(第29回生命情報科学シンポジウム)
渡辺 恒夫
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2010 年 28 巻 1 号 p. 127-

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抄録
科学のありかたを批判的に考察するために、主観的vs客観的、分析vs総合、価値中立vs価値指向の3つの対立軸を用意しよう。ガリレイ以降の近代科学は、これらの対立項の左側へと展開することによって、大きな成功を収めてきた。しかしその代償は宇宙からの意味の剥奪と環境破壊であった。これと対照的に環境科学に要請されているのは、右側への展開である。第1に、「環境」は「主体ないし主観」と独立に物理的に実在するものではなく、主観性を前提とした概念である。第2に、環境は主体に対して常に全体として立ち現れるがゆえに、近代科学の正統である分析的方法は対象適合的でなく、より生態学的に妥当な総合的方法が求められる。第3に、環境は主体にとって常に良いか悪いかという意味・価値をもって現れるがゆえに、価値中立は許されず、環境科学者は絶えず、何が誰にとって良い環境かの問題意識を求められる。このような、「未来の科学」としての環境科学の特徴は、生命情報科学にも通じるところがあろう。
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© 2010 国際生命情報科学会
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