抄録
筆者は第47回ISLISシンポジウム(2019年3月)において、呼吸の外的制約を伴う健康養生気功前後での気の感覚、演舞中の身体の協調度合いの変化について検討した。その結果、一定のリズムの呼吸を求められる気功を行うと、その後の気功演舞で身体の協応が向上することが示された。本研究では、気功歴40年の練功熟練者に筆者と同様の手続きで演舞を求め、呼吸の外的制約が熟練者においても肯定的な効果をもたらすのかを検討した。練功熟練者に規則的呼吸を伴う健康養生気功(太極気功十八式)の演舞の前後に、健康養生気功である易筋行気法の演舞を求め、前後の演舞における身体部位間の協調度合いをCRQAにより分析した。加えて、演舞後の気分及びフロー状態の変化をTDMS-STとFSSにより評価したところ、TDMS-STの得点比較から呼吸の外的制約を伴う太極気功十八式前後での気分は快適な活性状態へと変化したことが明らかとなった。FSSの得点を比較すると、太極気功十八式後の演舞中にフロー状態が深まったことが示唆された。さらに、太極気功十八式前後に行った易筋行気法の演舞における両手協応の程度は、軸足により異なることが示唆されたものの、初学者と比較すると極めて頑健な身体協調システムとして演舞が遂行されていることが明らかとなった。本研究では気分、フロー状態、そして身体の動き(両手協応)を総合して、「意と気と力の融合」という易筋行気法の極意について考察する。