伝統金属工芸におけるはんだ付に関する知見は,暗黙知と称する職人の経験に基づくコツやカンに依存する場合が多く,技能伝承のためには暗黙知を形式知化していく必要がある。そこで本研究では,旗金具製作におけるはんだ付作業の工程を作業ごとに分割した。さらに3次元動作解析と眼球運動解析を用いて,はんだ付作業における身体と眼球の運動を定量化した。旗金具の三方剣のはんだ付作業における工程は,「準備」,「仮組」「組立」「後処理」の4段階に分けられた。組立段階では,はんだのヌレ速さを視認し,はんだごての温度管理を行っていることが示唆された。はんだごてを母材とはんだの間で往復させる動作では,右MP2が視線よりも早く動き出し,視線が追いつき,追い越し,先に対象物に到達し,最後にはそれぞれ1周期における開始位置に戻っていた。(表3,図9)