奈良・東大寺の廬舎那仏像(いわゆる奈良・大仏)は,鋳了後,5か年を要して金メッキが施された。このメッキ法は,金アマルガムを鋳造像の表面に塗り,これを加熱して水銀を蒸発させ,表面に金を残す「アマルガム法」であった。
このとき蒸発させた水銀蒸気により,多数の職人が水銀中毒にり患したと言われている。しかしながら,中毒が発生したとする根拠は明らかにされていない。
そこで,本報では,金メッキ作業従事者の水銀中毒発生の可能性をリスクアセスメントにおけるリスク評価の方法を用いて検討した。
その結果,作業は危険な状況で,多数の作業者が中毒したと判断された。