明治大学社会科学研究所紀要
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DAX40社の中核11社と全体の所有構造比較
資本流動性ネットワークの観点から
清水 一之
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2024 年 62 巻 2 号 p. 2-21

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抄録

本研究は,ドイツの主要企業の株式所有構造を調査し,企業間の関係を明らかにすることを目的としている。この所有構造を把握するためにドイツの主要大企業30社(*2021年から40社に拡大)から構成されるDAX(ドイツ株式指数;Deutsche Aktien Index)採用企業の所有構造を独占委員会(Monopolkommission) が2年ごとに公刊する報告書から抽出する。このドイツを代表する40社の時系列の所有構造分析は,それを維持する生態系(エコシステム)の2年毎の変遷でもある。このエコシステムは,「効率・生産性」と「独占・寡占」という相反する環境要因を調整(コントロール)している。つまり,コントロールは,「効率・生産性」と「独占・寡占」に対して資本の流動性を方向付け,流動性ネットワークを調整している。本研究では,DAX40社を構成する中核11社と40社全体との構造比較からエコシステムを分析・解釈し,「ドイツ株式会社(Deutschland AG)」 の特徴と構造変化を検討する。さらに,分析する株式所有構造は,資本市場における流動性の構造を明らかにしている。この資本流動性ネットワークは,環境によって直接的または間接的,能動的または受動的な形態で効率的に変化している。一国経済の資本調達能力は,伝統的な中央集権的な資本機構から複雑化・高速化した分散・自動化された仮想市場へと移行しつつある。

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© 2024 明治大学社会科学研究所および本論文著者
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