理論と動態
Online ISSN : 2436-746X
Print ISSN : 2185-4432
特集:移民の統合/共生をめぐる理念・再考
韓国における移住女性人権運動の生成と展開
多文化家族政策をめぐる政府への抵抗と交渉を中心に
徐 阿貴
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2020 年 13 巻 p. 32-51

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抄録

 本稿は、東アジアにおける移民支援に関する連携的アクティビズムとして、韓国における移住女性人権運動に注目し、政治的機会構造の視角から検討を行う。民主化後の韓国では周辺アジア諸国からの人口流入が起き、市民社会からの連帯により、労働者の権利にもとづく移住労働者支援運動、つづいて女性の人権を掲げる移住女性人権運動が形成された。移住女性人権運動は進歩派政権期における政府と女性運動との協調関係、そしてジェンダー主流化を推進する女性部(現・女性家族部)設置を制度的機会とし、また国際規範となった女性の人権および女性に対する暴力を言説的機会とし、政策形成過程に影響を及ぼすことが可能になった。しかし結婚移住女性に対し再生産役割を課す多文化家族支援策や、在留資格/帰化制度への運動側の抵抗は、家族、あるいは女性の人権という、政府と運動との間の支援フレームの対立を浮き彫りにする。移住女性人権運動は、国籍やエスニックな多様性と越境性という視角を韓国の女性運動にもたらした。それは、冷戦構造が継続する韓国でこれまで女性運動が取り組んできた、ネイションの周辺部で暴力にさらされ、かつ厳格な国家管理を受けてきた女性たちへの支援運動に通じるものである。

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