理論と動態
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特集:移民の統合/共生をめぐる理念・再考
多文化共生と排外主義
排外主義との対峙をめぐる2つの論理
樋口 直人
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2020 年 13 巻 p. 52-67

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抄録

 多文化共生は排外主義といかに対峙しうるのか。多文化共生の概念・政策に対する批判は数多くなされてきたが、日本に存在する数少ない言説資源としての多文化共生を活用する方法を検討する発想は、これまでの学界では希薄だった。本稿では、排外主義に対して多文化共生が持つ有効性について、自治体の政策指針をもとに考える。その際、タギエフの人種主義-反人種主義の関係に関する枠組みをもとに、多文化共生を反差別と交流に分け、二者関係と三者関係にもとづく排外主義と取りうる関係を検討した。その結果、以下の点が明らかになった。(1)多文化共生(反差別)は排外主義(二者関係)と対峙するが、排外主義(三者関係)には有効ではない。(2)従来は評価の低かった多文化共生(交流)は、排外主義(二者関係)には確かに鈍感だが、排外主義(三者関係)には対峙しうる。国際交流の延長としての多文化共生は、御用学者の間ですら低く評価されていたが、この政策が提唱された経緯は中央政府に対抗する意図が含まれていた。こうした論点は多文化共生をめぐる議論で欠落していたが、(2)はその可能性を再発見するものであり、今後は理論的な考察を深めていくことが必要になる。

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