理論と動態
Online ISSN : 2436-746X
Print ISSN : 2185-4432
<部落問題>
国民を自覚する装置
──部落問題研究の新たな枠組みのために──
小早川 明良
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2009 年 2 巻 p. 76-93

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抄録

  近世被差別民は「役」を担う人々として武装し、たえず戦闘訓練を行なっていた。被差別民は(準)軍事力であり、その行使を通して封建体制に包摂されていた。封建体制の崩壊とともに、武士と同様、彼らの武装も解除され、軍事力と警察力は国家に集中していった。そして彼らは、産業資本主義の到来とともに社会の周縁に排除されていった。その過程で、地域により多様性をもっていた近世の被差別民は、すべて「穢多」「非人」として認識されるという転換が起こった。産業資本主義と国民国家は、体制的危機にあって、社会の周縁にある被差別部落民をより強固な国民意識のもとに統合し、国家に動員した。その際、部落改善運動という手法が採られた。それは、貯蓄を奨励する、衛生思想を普及する、正確不変とされた戸籍の姓を変更するという内容をもつものであった。

  本稿は、部落問題研究の新たなパラダイムを提示する試みである。支配する者/支配される者という、古典的で二項対立的な図式から思考を解放し、新たな部落問題認識の方法の構築をめざす。そこで、近世被差別民の軍事的解体に着目し、また、近代の被差別部落民が権力構造にどのように組み込まれていったかについて考察する。

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© 2009 特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所
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