2012 年 5 巻 p. 24-42
2008年に「ハンセン病問題基本法」が成立した。基本法は療養所の医療・福祉水準の維持を図るために、療養所の社会化が不可欠とした。なぜなら、療養所が地域住民にも開かれた医療機関に転換することで、医療設備と人員をこれまでのように維持できるからだ。ところが社会化に伴い、入所者と地域住民の出会いから生み出されるスティグマを、どのように克服するのかという問題が生じる。それは、精神障害やHIV感染者の取り組みに学ぶべきところが大きい。この論文では、スティグマを乗り越えて、地域社会での生活を可能にする道筋を示そう。まず精神障害者の地域生活の例として、愛媛県南宇和郡愛南町のNPO法人「ハートinハートなんぐん市場」の実践を取り上げる。このNPOは50年近く、精神障害者を中心にさまざまなイベントを行い、地域住民と障害者の「いい出会い」の場を作り出してきた。両者の関係性は、スティグマを成立させない関係性と解釈できる。次にHIV感染者について考察する。ここでスティグマは、関係性を分断し、当事者同士を個別化させ孤立させる権力作用として働く。具体的には新ヶ江[2009]がコミュニケーションの問題として提示したパッシングの問題である。つまり彼らは、スティグマの露見を恐れ、他者との交流を限定する傾向にある。これに対抗するためには、当事者の「生きづらさ」を分かち合う「仲間」のネットワークを作り出し、それを地域社会に広げていくことが必要になるだろう。