2012 年 5 巻 p. 43-59
外国人を地域社会の一員としての〈住民〉と位置づける動きが進展している一方で、2008年秋のリーマンショック後の経済不況下における、南米系外国人の大幅な減少と失業の急増が認められる。こうした状況に対して、外国人の〈住民〉としての位置づけに重きをおく地域ベースの共生論は限界があり、外国人の権利保障、社会参画につながる道筋を描き出すことができないのではという根本的な疑念が浮かび上がってくる。本稿では、このような問題に対して、近年の地域ベースの共生論をめぐる議論を概観した上で、①コミュニティでの関係性を中心とした地域に焦点をあてることの分析的、および規範的な問題、②脱政治的で、マジョリティの変容を見ないという、2つの批判を検討する。これら2つの批判に対して、地域ベースの共生論の可能性を愛知県西尾市の外国籍住民集住団地を中心とした〈共生〉の地域的実践事例の分析を通して検討した。その結果、上述の2つの批判に対して、①地域での〈共生〉の取り組みを通じた住民意識の変容と、同化的ではない外国籍住民の社会参画、②一定の政治性を持ち、制度変革につながる地域ベースの〈共生〉の実践のあり方を対置した。こうしたマジョリティの変容をもたらす地域ベースの共生論からは、外国人の社会参画につながりうるモデルを提示することが可能と考えられる。