理論と動態
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建設産業における下層労働者のコミュニティ
生産性と共同性のせめぎ合い
渡辺 拓也
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2015 年 8 巻 p. 74-91

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抄録

 本稿の目的は、現代日本の建設産業における下層労働の実態を、労働者のコミュニティにおける生産性と共同性のせめぎ合いを通して明らかにするところにある。

 1990年代後半以降の建設市場縮小傾向の下で、ゼネコンと下請業者との関係が再編され、下請間の競争の激化、低価格受注競争が起こった。飯場は建設産業に おける下層労働の典型事例であり、労働条件が悪く、労働力の確保が困難な類の仕事につく低廉な労働者を集める一種の装置として、労働力供給の一端を担っている。本研究では主要な求人手段として旧来からある寄せ場を活用する飯場と1980年代以降に発展した求人広告市場を活用する飯場の2つのタイプを対象とし、両者の比較から過酷になる建設労働の実態を読み解いた。

 生産目標の設定によって迫られる生産性の向上と、生産性を向上するための協働の実践である共同性は、労働者のコミュニティ内部でせめぎ合う関係にある。共同性なくして生産性の向上はむずかしく、生産目標を達成できなければ共同性の母体たるコミュニティの維持が不可能になる。衰退傾向にある寄せ場で求人する飯場でも建設産業の変容に合わせた対応が認められ、労働者の共同性が現場労働を支えるものとして当てにされていた。一方、求人広告市場を活用する飯場では、コスト カットに対応するために、共同性の領域が切り詰められ、労働者が使い捨てにされている実態が明らかになった。

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© 2015 特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所
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