2016 年 9 巻 p. 20-36
本論文は太平洋戦争後に日本周辺で行われた、いわゆる「密貿易」の実態を、GHQ による文書を中心に再構成したものである。これまで沖縄研究の文脈で研究されてきた密貿易には、先行研究が指摘する以上に日本人や朝鮮人が参加していた。彼らは小規模な組織を作り、中には極右集団と関係を持つものもあった。占領軍は密貿易が共産主義国の支持組織によって担われているのではないかと恐れたが、実際に密貿易が関係していた国際的な組織は中国国民党だった可能性も否定できない。密貿易とは、戦後の空白期において、人々が新たに、自発的に、意図的に、一瞬のうちに作り出した、経済的あるいは政治的なネットワークの集合体である。