理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: EP764
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成人中枢神経疾患
会話が脳血管障害者の歩行に与える影響
*松田 淳子野谷 美樹子朝倉 健安藤 絵未泉 葉子吉尾 雅春米田 稔彦
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キーワード: 脳血管障害, 歩行, 二重課題
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抄録
【目的】脳血管障害者の歩行中に会話すると彼らが途中で立ち止まったり歩調を緩めようとする場面に遭遇する。「歩きながら話す」ことは苦手だという。本研究では会話課題が脳血管障害者の歩行に与える外乱的な影響を考察する。
【対象】当院に外来または入院加療中で、失語症や半側空間無視などの明らかな高次神経機能障害を合併しない屋内歩行自立レベル以上の脳血管障害者(以下CVA群)21名を対象とした。内訳は外来12名、入院9名、男性16名、女性5名、右片麻痺8名、左片麻痺13名、年齢56.8±11.3歳。また、年齢63.7±8.5歳、男性5名、女性4名の健常成人9名を対照群(以下健常群)とした。対象者には予め研究内容を伝え協力の同意を得た。
【方法】5mの歩行路上で、1)自由歩行、2)会話課題に応えながらの歩行(以下課題歩行)、の2条件下での杖無し歩行を測定した。いずれも快適速度での歩行とし、日常使用している装具は装着した状態で測定した。会話課題は、予め「15」という数字の記憶を求め、歩行中にセラピストが言う数字を「15」から引き、答えを発声してもらう計算問題を用いた。歩行の測定と評価はVicon Motion Systems社製Vicon512およびVicon Clinical Manager(VCM)を用いて行った。評価項目は、歩行スピード、歩行率、歩幅、二重支持時間とした。分析には対応のあるt検定を用いた。
【結果】1)健常群の歩行スピードは自由歩行時1.02±0.04m/s、課題歩行時0.97±0.03m/sで、両者の間に有意差は認めなかった。また、他の項目に関しても群内での有意な関係は認めなかった。2)CVA群の歩行スピードは自由歩行時0.44±0.05m/s、課題歩行時0.38±0.03m/sとなり、課題の有無で有意差が認められた(p<0.05)。3)CVA群の歩幅は、麻痺側では課題の間で有意な差は認められなかったが、非麻痺側では自由歩行時0.26±0.16m、課題歩行時0.23±0.16mとなり、課題歩行時に有意に減ずる傾向が認められた(p<0.05)。4)CVA群の歩行率と二重支持時間は課題の有無で有意差を認めなかった。5)CVA群のうち外来者のみの課題による歩行スピードの差をみてみると、課題の有無による差は発生しなかった。
【考察】歩行時に会話をすることは、歩行以外のことに注意を分散することになる。調査の結果、脳血管障害者には課題が加わることにより、歩行への外乱的な影響が認められた。歩行周期における二重支持時間の延長は認められなかったが、非麻痺側のステップ長の減少が認められた。これは、注意を分散する上での歩行時の不安定要素を少なくするための戦略の一つではないかと考えられた。また、外来通院者に今回の課題での歩行スピードへの影響が認められなかった。発症後期間が長くより多くの場面の経験をしている外来患者のこの結果から、より効率的な歩行の再獲得を援助していく為に理学療法場面でこうした課題を早期から用いることの可能性が考えられた。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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