ボランティア学研究
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Print ISSN : 1345-9511
【特別寄稿】 ボランティアを科学する
「ボランティア学研究」の10年
内海 成治
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2011 年 11 巻 p. 37-49

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抄録

国際ボランティア学会の雑誌「ボランティア学研究」発刊から10年が経過し10号になった。この機会にこれまでの雑誌を読み返して、10年の歩みを振り返り、何が問題になってきたのか、今後何を考えるべきかを検討した。特に第2号からは特集が組まれ、2、3本の論文により、その時々のボランティアをめぐる課題にも応えてきた。そこで今回は特集を中心に、論文のレビューを行った。本来、ボランティア研究は多様な学問領域からボランティアという現象あるいは活動に迫るものであり、データの収集や分析の手法はさまざまである。また人文科学と社会科学では大きく異なることが予想される。 しかし、10巻の研究誌をレビューすると、いくつかの共通の柱があるように思われた。ひとつは公共性をめぐる論議である。第1号には公共をめぐる二つの優れた論文が掲載されていることからも分かるように、その後の巻にも公共性をめぐる論考が一つの柱になっている。 今ひとつは市民社会論である。ボランティアの依拠する社会をめぐる議論である。ボランティアが社会を変革する力があることから、市民社会を動かしていく力としてのボランティアへの期待であると思う。 今ひとつは予想された通り多様性も特徴であると思う。しかし、いずれの論文もさまざまな課題に対して、これまで自明のこととされてきたことが実はそうではなく、研究によって新しい側面が暴露されると言う、大変スリリングな議論が多いことも「ボランティア学研究」誌の特徴であると思われた。 こうした意味でボランティア学の必要性は高く、また、この雑誌「ボランティア学研究」の果たすべき役割の重要性が再認識された。

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2011 国際ボランティア学会
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