網膜上の心理物理的対応点である経験的ホロプター形状に関し,視線が正面方向では左右の外側が手前に湾曲し,上方が遠方に傾いた形状の面であることが知られている.ただし,それ以外の視線方向におけるホロプター形状は明確に特定されていない.そこで本論文では,正面0゚,左右30゚,上下30゚の視線方向の両眼の網膜対応点を測定し,経験的ホロプター形状を同定した.その結果,視線方向と垂直になるように設置したディスプレイに対するホロプター形状は,正面注視の場合と比べると,左方注視では左側が手前(右側が奥)に傾き,右方注視では逆に右側が手前(左側が奥)に傾いた形状であり,上方注視では上方が遠方に倒れ,下方注視では逆に上方が手前に傾いた形状であることがわかった.また,正面以外の視線方向のホロプター形状に関し,正面0゚のホロプター形状から推定される理論値と,実測値とを比較し,その形状の違いの原因について考察した.