映像情報メディア学会誌
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論文
コミュニケーションロボットの発話に向けたテレビ視聴時における人同士の対話分析
星 祐太奥田 誠萩尾 勇太上村 真利奈金子 豊西本 友成
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2023 年 77 巻 1 号 p. 149-156

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抄録

近年,視聴端末の多様化や単独世帯数の増加を背景に,テレビの視聴スタイルは大きく変化し,家庭内で1人で視聴している人が増加している.しかしながら,複数人での視聴には,感情の共有やテレビ視聴を起点とした雑談など,1人での視聴では得られない楽しさがある.そこで我々は,複数人でのテレビ視聴と同等の体験を創出することを目的として,人と一緒にテレビを視聴するコミュニケーションロボットの開発を進めている.本論文では,ロボットが人と対話するときの設計指針を獲得するために,テレビ視聴時における人同士の対話を分析した.対話データは,6グループ12名によるテレビ視聴実験から取得した.対話における最初の発話(第一発話)と次の相手の発話(第二発話)を10種類の発話項目へ分類し,定量的に分析した結果,第一発話は自らの気持ちを表出する「開示」の発話割合が最多となり,第一発話の「質問」「確認」に対する第二発話では80%前後が応答するという傾向を確認した.また,発話文字数は第一発話より第二発話が有意に短文となり,対話のターン数は対話の半数以上が4ターン以内であった.これらの人同士の対話の分析結果より,ロボットは視聴中の番組シーンに対する気持ちを表す「開示」の発話をする,人の「質問」や「確認」には高い割合で応答する,人の第一発話に応答する際は必ずしも詳細に応答する必要はない,視聴中の番組の内容に沿って話題を転換するなど,テレビ視聴をともにするロボットの対話指針に有用な知見を得た.

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© 2023 一般社団法人 映像情報メディア学会
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