2025 年 79 巻 5 号 p. 541-547
本研究は,日本語の漢字仮名交じり文における最適停留位置を明らかにすることを目的とした.再停留が最も生じにくい停留位置を意味する最適停留位置は,英語など単語間にスペースを有する多くの言語で確認されているが,日本語の漢字仮名交じり文では未だ十分に検証されていなかった.本研究では,視線検出装置を用いて,漢字仮名交じり文における停留場所を詳細に分析した.その結果,文節単位での最適停留位置が確認され,その位置は文節中央もしくは文節中央からやや前方寄りであった.一方で,実際に停留しやすい位置は,最適停留位置とは必ずしも一致せず,特に漢字を含む文節では,停留位置が漢字の存在する文節先頭付近に偏る傾向がみられた.また,一文節の長さが4文字以上になると,文節後方に再停留が生じやすいことがわかった.