2026 年 80 巻 1 号 p. 94-98
ヘッドマウントディスプレイ(head-mounted display; HMD)は,将来の映像表示装置として注目されている.その理想的な性能は,裸眼での視体験と区別がつかない映像を提供できるものであると考えられ,したがって人間の視覚系の性能を少し凌駕していることが期待される.そこで,HMDの性能のうち,特に没入感に関わる視野の広さと映像の本物らしさに関わる画素密度に着目し,人間の視覚系の空間的性能を評価する実験を行った.従来の研究は網膜中心座標系に基づいており,眼球運動を考慮していないため,HMD設計の指針には適さない.そこで,頭部を固定し眼球を自由に動かせる条件下で,有効視野と周辺視野の空間解像度特性を測定し,得られた知見を頭部中心座標系で記述することで,HMD設計に活用可能な形に整理した.これらの成果は,将来の映像環境の設計指針として活用されるべく,イマーシブメディアの表示装置についての国際規格に反映された.今後のHMD開発においては,ユーザの感覚や認知に基づいた設計がますます重要になると考えられる.