抄録
本論文は, 光導電膜として異種接合薄膜を電荷転送素子CCD上に積層した固体撮像素子に関するものである.積層形固体撮像素子は, 1セルあたりの光学的開口率が大きいため高感度で, かつ入射光の大部分を光導電膜で吸収し, さらに絵素電極で阻止するためスミア特性にすぐれている等の特徴を有する.しかし, 積層形固体撮像素子がその性能を充分に発揮するためには, 積層光導電膜と走査素子間における動作上の整合が必要である.本論文では, 積層形固体撮像素子の動作設計条件を明らかにし, 実験との対応を試み, 良い一致が得られることを示す.走査部に電荷転送素子を用いた積層形固体撮像素子のいまひとつの課題はハイライト残像である.強い入射光時における光導電膜の生成電荷量は, 電荷転送素子の最大取扱い電荷量の5~8倍に達し, 残像となる.この課題は, 垂直ブランキング期間の信号処理により解決し得ることを示す.以上を総合して得られた結果について述べる.