抄録
イオン化蒸着法を用い、テトラフェニルジアミノビフェニル(TPD)のアクリレート化合物からビニルポリマーの蒸着重合膜を作製した。重合は成膜時の電子照射によって促進されたが、中性ラジカルが反応に関与しているものと考えられる。照射電子電流を増大すると、重合活性種の増加を反映して高分子収率が増大し、平均分子量は減少した。重合は成膜時の基板加熱によっても促進された。蒸着膜を真空中で熱処理することで重合がさらに進行し、膜の平坦性も改善された。基板温度50℃でイオン化蒸着した膜を、真空中140℃で熱処理して平均分子量2.2×10^4、重合収率91%の膜が得られた。TPD蒸着重合はEL素子のホール輸送層としての応用が可能であり、成膜時の基板加熱や成膜後の熱処理によってEL特性が改善された。